持続的な企業価値向上に向けて
長期成長戦略と直結させた人財戦略ロードマップを策定
マテリアリティ「人財の幸福度の追求」を起点に「幸福にあふれる豊かな未来社会」の実現を目指す東京応化は、「事業の原点は、常に「人」であることを忘れてはならない」とする「人財活用方針」のもと、人財戦略を価値創造の原点として展開することで、持続的な成長に邁進しています。そうした中2024年2月には、上方修正した「TOK Vision 2030」の達成に向けた「人財戦略ロードマップ」を整理し、2030年までに年平均12%の事業成長を実現し続けるための「4つの人財戦略」を策定、スタートしました。
具体的には、今後も成長が見込まれる半導体業界において最先端のイノベーションを創出し続けるため、事業規模拡大を支える「多様性に富んだ母集団の形成」に注力するとともに、一人ひとりに寄り添ったキャリアプランや教育機会の拡充等による「人財育成」、性別や国籍を問わず全ての従業員が力を発揮し相乗効果を生み出すための「DE&I」の推進、そして、これらの効果を最大化させるための「エンゲージメントの向上」に取り組むことで、エンゲージメントの高いタレントが協業を通じて優れたパフォーマンスを発揮し、その成果としての「誇り」や「やりがい」を感じることができる「活気にあふれる職場」(活き活き働ける場)の提供を目指しています。
当社グループはこれらロードマップとサステナビリティ・ガバナンスのもと、価値創造の源泉である「人財」とそれが生み出す「技術」「人脈」に「財務」を加えた4つの「稼ぐ力」による価値創造に邁進します。これにより、創業以来ファインケミカルメーカーとして積み上げてきた「高度なトレードオン」をさらに積み上げることで、「TOK Vision 2030」の達成と持続的な企業価値向上を目指します。
「幸福度」の定義を、社外取締役を交え議論
一方、当社グループは、マテリアリティ「人財の幸福度の追求」への取組みの「実効性」と「解像度」をさらに高め、企業価値向上にダイレクトにつなげるべく、取締役会や取締役協議会をはじめとする各種会議体で「幸福度」について議論を重ねてきました。過去のエンゲージメント調査における従業員からの声や社外取締役の客観的な視点も踏まえて出した答えが、「幸福度=自己成長による自己実現」です。
個々の人財が自律的にキャリア目標を掲げ、努力を重ね達成に向かう道程を当社がしっかりサポートすることで、全従業員による自発的・自律的・意欲的なキャリア構築と幸福度の実現を目指します。そして、こうした自発的・自律的な意欲を常に喚起する環境を提供し続けることで当社グループの価値創造力を最大化し、「キャリアのさらなる充足」や「評価/報酬の向上」等の成果を生み出しつつ、企業価値向上へ向けた大きな好循環を回していく構えです。
人財活用方針TOKグループとして創業以来一貫してTOKグループの従業員等を貴重な財産と捉え、遵守してきた「人財こそ企業の財産」を踏襲した5つの方針から構成されています。
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人財戦略ロードマップ
従業員エンゲージメントの向上に経営陣がコミット
前述の通り役員報酬制度におけるKPIとして「従業員エンゲージメント指標」を導入してから2年が経過し、個々の人財の自己実現と会社の成長を同期させることへの意識が当社役員やマネジメント全員のミッションとして浸透し始めている一方、2023年度に実施したエンゲージメント調査結果は、「社員エンゲージメント」がマイナス2ポイント、「社員を活かす環境」がプラス2ポイントと取組みは道半ばとなりました。
また、定性面での評価においては
- 自由闊達な社風に裏付けされた風土や会社への愛着
- 高品質・顧客密着に象徴される品質・顧客志向
- 強い社会的責任感や高い倫理観といった品行方正な組 織風土
- 日本平均を大きく上回る報酬・福利厚生ならびに付随 する人事制度の競争力
が強みとして評価された一方、課題として
- 全社の進化をけん引する「戦略・方向性」「リーダーシップ」の再強化
- 全社、本部、部署等、組織階層に応じた課題への対策
- 従業員の能力がさらに発揮できる環境づくり
が必要であることがわかりました。
取締役会および取締役協議会ではこの結果を受け、スコアが特に下降した「社員エンゲージメント」「戦略・方向性」への取組みが喫緊の課題であると認識し、その改善策をメインテーマとする全役員参加の討論会を2023年11月に実施しました。
当討論会では、各本部/子会社のエンゲージメント調査結果のレビューや2021年からの取組み状況の確認、今後の取組みについての協議を行った結果、2024年12月期は以下の6つの重点施策に取り組むこととしました。現在、全社/各本部/部署/子会社の全てのレイヤーにおいてそれぞれの重点施策に注力しています。
従業員エンゲージメント強化策
―2024年12月期「取組み方針」―
●経営層からの戦略・方向性の発信機会を増やす
●全社・本部・部署と組織階層を分け、全ての層で対策を並行して進める
―2024年12月期「人財戦略6つの重点施策」―
- 部署間・本部間の壁を取り除くための人事ローテーション等の実施
- キャリア支援の強化
- 教育・研修機会の充実
- チャレンジを奨励する風土づくりの強化
- 革新的な業務推進法の導入
- リソースの継続的増強
若年層の採用拡大による年齢構成の変化
*当社から当社外への出向者および嘱託者を含めず、当社外から当社への出向者を含んでいます。
若年層の採用拡大により、
人的資本のサステナビリティを強化
特に人的資本の「質」「量」の強化においては、近年の半導体産業の成長と少子高齢化に伴う労働人口減少が相まって人財の逼迫感が高まっていたことから、新卒採用/キャリア採用の強化によって若年人財を増強した結果、「年齢構成」「量」の双方において人的資本のサステナビリティを強化することができました。足元では「TOK Vision 2030」の実現に向けて、引き続き採用拡大による人的資本の増強に注力しています。
処遇維持を伴う65歳定年制度を導入予定
一方、半導体の最先端分野においては日々のスピード対応と並行して10年以上に渡る「ロングランの研究開発」に取り組むことも重要であるほか、当社シニア人財が蓄積してきた技術・ノウハウといった知的資本は今後の事業戦略においても大きな価値を創出することから、2025年より「処遇維持を伴う65歳定年制度」を導入します。これは、60歳以上の人財の処遇においても現役時と同じ役割給を維持する画期的な制度であり、当社は同制度をフル活用することで、足元でますます高度化する事業課題/技術課題への対応を強化するとともに、シニア人財から若年人財への知的資本の移譲を十分に行うことで、人財ポートフォリオ全体の「質」も高めていく考えです。
「tok中期計画2024」およびマテリアリティ、
「TOK Vision 2030」への取組み
新人事制度のさらなる浸透と「6つの重点施策」に注力
マテリアリティ「人財の幸福度の追求」と密接に連動させた中計戦略「従業員エンゲージメントを向上させ人を活かす経営を推進」の2年目であった2023年12月期は、1年目の課題として抽出した「新人事制度への理解不足」の解消に向けて「評価者訓練」を強化し、新人事制度のコンセプトと内容をまずは現場管理職に浸透させる活動を展開しました。
その結果、2023年のエンゲージメント調査への回答では「期待役割に対する理解が深まった」「上司のフィードバックへの納得度が高まった」等のコメントが増えるなど、前年からの明確な改善を確認できました。加えて、「若くても結果を出し役割をしっかり果たすことができる人財は旧制度よりも早く昇格できる。だからやる気に繋がっている」との声も寄せられています。中計最終年度である2024年12月期は新人事制度のさらなる浸透を図りながら前述の「6つの重点施策」に注力し、従業員の「幸福度=自己成長による自己実現」を全力でサポートしていきます。
人的資本への投資を拡充することで、さらなる企業価値向上へ
当社グループのバリューチェーンは高度な技術とお客様やサプライヤーとの人脈によって構築されており、その源泉となるのが人財です。人財へ積極的に投資することで技術、人脈の進化を促進し、持続的な付加価値の創出を実現します。当社グループは、バリューチェーンを構築する技術や人脈の源泉となる人財へ積極的に投資することで、持続的な付加価値の創出と企業価値の向上を目指します。
人的資本への投資の大部分は人件費へ振り向け、直近10年は毎年2~5%程度の賃上げを継続しているほか、1人当たり教育研修費も増加トレンドを維持しています。
特に教育研修費については2021年度のエンゲージメント調査で拡充要望が多数寄せられたことから重点的に強化し、従来の階層別教育等の集合研修だけでなく、個々のニーズに沿ったeラーニングシステムを2023年10月に導入し活発に利用されています。また、「ほめる文化」のさらなる浸透に向けて表彰制度を拡充し、優れた研究開発を表彰する「向井技術賞」については賞金額を競合ベンチマーク以上に設定しているほか、技術部門以外を対象とする「TOKSHINKAAWARD」を新設することで、モチベーション作りに活用しています。2024年12月期はグローバル連結経営の強化策の一環として表彰バウンダリーを海外グループ会社にも拡大し、グループ一体となった新たな価値創造に邁進しています。
さらなるイノベーションの創出に向けた
「多様性に富んだ母集団の形成」「DE&I」の強化
前述の通りさらなるイノベーションの創出に向けた人財戦略「多様性に富んだ母集団の形成」「DE&I」に取り組む当社グループは、事業環境における機会とリスクの双方が極大化する中、今後もパーパス「社会の期待に化学で応える」を実践し続けていくためには多様な見識や価値感、専門性を活かしたイノベーションの創出やリスク対応が必須となることから、「女性人財のさらなる活躍」と「外国籍人財活用のさらなる進化」に注力しています。
2023年12月期の「女性管理職比率」および「全従業員における女性比率」は、これまでの女性人財の採用・定着・管理職への登用の取組みが結実しいずれも過去最高となったほか、「男女間の平均勤続年数の差」についても過去最小となりました。足元では個々の女性従業員だけでなく所属部署や上司への啓蒙を強化したほか、2023年8月には海外派遣配偶者同行休業制度を導入するなど、さらなる女性活躍へ向けた風土/仕組みづくりを加速しています。また、男性育児休職制度取得率も直近2年で加速度的に増加し、2023年12月期の取得者は前年比2倍の24名に増加し、取得率は67%となりました。引き続き、ジェンダーによらず仕事と育児の両立がしやすい職場環境の整備を進めていきます。
外国籍従業員数、外国籍従業員比率は2023年12月期は海外子会社の一部を連結対象外とした影響から一時的に減少したものの基本的に上昇傾向にあるほか、マテリアリティのKPIの1つである「海外管理職の現地化比率」も過去最高の56.3%となりました。海外売上高の拡大に伴い今後もこの傾向は続く見込みであることから、国籍を超えた知見・価値観のシナジー創出に向けて数年来取り組んできたグループ間の人財交流を、さらに拡充していく構えです。
女性従業員の参画に関する指標(単体)*1
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023/12 | |
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新規採用における女性比率(%) | 39.4 | 38.5 | 17.0 | 26.4 | 22.4 |
全従業員における女性比率(%) | 13.0 | 13.7 | 14.0 | 14.6 | 15.3 |
男女間の平均勤続年数の差(年) | 9.3 | 9.1 | 8.4 | 8.1 | 7.9 |
管理職における女性比率(%) | 3.3 | 3.2 | 3.8 | 4.0 | 4.5 |
取締役会における女性比率(%)*2 | 7.7 | 7.7 | 7.1 | 10.0 | 20.0*2 |
*1従業員数には、当社から当社外への出向者および嘱託者を含めず、当社外から当社への出向者を含む
*2取締役会における女性比率は2024年時点
男女間賃金の差異(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)(単体)*1
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023/12 | |
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全労働者(単体)(%) | 49.7 | 59.1 | 65.5 | 65.4 | 71.3 |
うち正社員*2 (%) |
65.5 | 67.4 | 69.4 | 68.2 | 70.0 |
うち有期社員*3 (%) |
33.9 | 49.8 | 60.4 | 61.5 | 83.4 |
*1賃金:基本給、超過労働に対する報酬、賞与等を含み、退職手当、通勤手当等を除く
*2正社員:出向者については、当社から社外への出向者を除き、他社から当社への出向者を含む
*3有期社員:嘱託を含み、派遣社員を除く
差異についての補足説明: 当社において、性別による賃金体系および制度上の違いはありませんが、管理職比率を含む等級別人員構成に男女差があり、それに伴う賃金差異が発生しています。今後はマテリアリティのKPI目標として設定した「女性管理職比率の向上:2030年までに2倍(2020年比)」の達成を目指し、女性の管理職登用を推進していきます。 |
育児関連制度利用者数(単体)
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023/12 | |
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育児休職制度(人) | 16 | 19 | 27 | 31 | 40 |
育児短時間勤務(人) |
13 | 12 | 16 | 17 | 24 |
チャイルドケアタイム(人) |
16 | 16 | 13 | 15 | 23 |
男性育児休職制度(人) |
1 | 5 | 8 | 12 | 24 |
外国籍従業員数
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023/12 | |
---|---|---|---|---|---|
外国籍従業員 (単体)(人) |
16 | 18 | 18 | 24 | 16 |
外国籍従業員数 (連結)(人) |
412 | 424 | 476 | 524 | 457 |
外国籍従業員比率(連結)(%) | 23.9 | 24.2 | 26.2 | 26.9 | 24.3 |
* 2023/12の減少は、海外連結子会社の再編等によるものです。
人財の健康と安全の確保に向けて
健康経営についても従業員エンゲージメント向上の視点で推進
2022年6月に「健康経営宣言」を策定以来健康経営に注力してきた当社グループは、個々の人財が心身ともに自己実現し幸福度を高めることができる環境づくりを進めていきます。2024年12月期は「プレゼンティーイズム」の測定を重点施策の1つとして進めているほか、以下の従来施策を継続・進化させていきます。
従業員が心身ともに健康で、個性や能力を最大限に発揮できる環境づくりの1つとして、引き続き健康保険組合との協働のもと、役員・従業員の疾病の予防・発見に努め、健康の保持・増進に向けて「コラボヘルス」を実践しています。その一例として、健康ポータルアプリ「MYHEALTHWEB」を役員・従業員に提供し、健康に関する知識・意識向上へ向けた情報発信を行っているほか、ウォーキングラリー「歩Fes.」を定期開催し、社長をはじめ多くの役員・従業員が参加しています。2024年1月にはスポーツ庁より「スポーツエールカンパニー」に認定されました(通算4回目)。
また、心身の健康相談のために一部拠点で保健師を導入したほか、足元では、受動喫煙対策を強化しつつ従業員の喫煙率低減を進めています。今後も健康経営のPDCAを強化し、役員・従業員が自律的に健康管理を行う健康文化の醸成を目指します。
これら一連の取組みが評価され、2024年3月には経済産業省/日本健康会議による「健康経営優良法人2024」に認定されました(通算6回目)。
成長の果実を人的資本に「再投資」することで、人財の幸福度(=自己実現)と企業価値向上の「好循環」を回し続けます
上記一連の人財施策によって当社グループは、今後も人的資本への投資によって個々の人財の自律的なスキルアップと能力向上による自己実現を促進し、より難易度の高い社会的・技術的課題の解決やトレードオンに貢献することで、当社製品のさらなる高付加価値化と競争力向上に邁進します。
これにより、さらなる収益拡大と企業価値向上を実現し、得られた果実を人的資本に「再投資」することで、各人財の幸福度(=自己実現)と企業価値向上の「好循環」を回し続けていきます。今後も、東京応化の人財の幸福度を起点とする企業価値向上に、是非ご期待ください。
労働組合との関わり
東京応化工業労働組合は1976年に結成され、UAゼンセンに所属しています。同労働組合と当社はユニオン・ショップ協定を結んでいます。2023年12月末において、当社に属する同労働組合員数は1,193名であり、当社従業員の81.4%が労働組合に加入しています。労使関係は労働組合結成当初から「労使協調」路線を継続して良好な関係にあり、2ヵ月に1回の頻度で「中央労使協議会」を開き、経営環境や労使の課題などについて意見交換を行っています。また、労働条件や職場環境の整備など労働安全衛生を含む様々な労働協約を締結しており、業務上の勤務形態などの変更を実施する場合には事前に労働組合と協議しながら進めています。2020年12月期に新人事制度や再雇用制度等の労使協議の場として「人事制度労使検討会」を立ち上げ、2022年1月1日より新人事制度及び再雇用制度の見直しにおいて導入。さらには、定年年齢延長に関する議論を継続的に行い2024年5月末に労使合意した。現在、2025年1月1日に「65歳定年年齢延長」「エルダーマイスター制度」「ポイント制退職金制度」の制度開始に向けて労使で協力し進めております。