TCFD提言への賛同

KPI目標を短期/中期/長期で設定のうえ「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指す東京応化は、パリ協定の「1.5℃目標」と2030年までの「成長戦略」を整合させるための「中間目標」を2024年2月に新たに策定したほか、この取組みを着実に進めるための直近のマイルストーンとして、2027年までのKPIであるCO2排出削減目標値を新中計「tok中期計画2027」の定量目標として明確に設定しました。引き続き、短期/中期/長期のKPI目標を伴う時間軸により、「CO2絶対排出量の最小化」と「削減貢献量の最大化」を軸とする企業価値拡大に邁進します。
「 目指す社会」と気候変動関連マテリアリティ
幸福度にあふれる「豊かな未来」の実現を目指す東京応化は、その実現に向けた大前提が「カーボンニュートラル」であると考えています。そして、これらを見据えた長期的取組みの起点として、「tok Vision 2030」からバックキャストした新マテリアリティ「豊かな未来を見据えた地球環境への貢献」と「tok中期計画2027」への取組みに注力しています。
ガバナンス
当社独自のマテリアリティ「サステナビリティガバナンスの進化」のもと、取締役会(役割:決議とモニタリング)と取締役協議会(役割:テーマ設定/議論)の連携により、2050年のカーボンニュートラルへの取組みに注力しています。取締役協議会では各部署長・執行役員・取締役が当社を取り巻く気候変動課題の最新状況について共有・議論するほか、施策実行にあたっては各執行役員が現場の陣頭指揮にあたります。取締役会はこれら一連の活動とKPI推移をモニタリングし、足元の気候変動関連課題や「リスクと機会」の変化、カーボンニュートラル投資の進捗を踏まえながら、対応策を常にアップデートしています。
リスク管理
上記ガバナンス体制、および取締役社長と各本部長、ERM部で構成された「リスク管理委員会」を中心とするリスクマネジメント体制のもと、取締役社長を最高責任者として気候変動対応関連の各種活動のPDCAを徹底し、継続的なリスク管理に取り組んでいます。
戦略(シナリオ分析)
当社は、21世紀末までの平均気温の上昇について、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示す「1.5℃シナリオ」および「4℃シナリオ」を参照のうえシナリオ分析を進め、当社グループの事業全体にかかるリスクと機会について、機会の定量分析を含めて把握・整理しました。その結果、「1.5℃シナリオ」「4℃シナリオ」のいずれにおいても、半導体の微細化や積層化、パワー半導体向け需要をはじめとする豊富な事業機会を取り込みながら脱炭素に貢献し、今後想定される物理的リスクにも適切に対応しレジリエンスを強化していくことで、当社グループが中長期的に企業価値を向上させることは十分可能であることを再確認しました。
指標と目標
KPIの「中間目標」においては、成長戦略によって工場生産量が大幅に増える中、当社グループ全体の2030年のCO2絶対排出量を2019年比30%削減することを目指します。これは、削減努力をしなければ2019年比で大幅に増加すると想定される2030年排出量のうち、30%以上を削減するというアグレッシブな目標です。また、同目標を達成後の2030年~2050年を見据えてインターナルカーボンプライシングや排出権取引を含む財務的影響も試算しており、今後は成長戦略や業績目標の進捗状況/見通し等との連動性も深めつつ、しかるべきタイミングで開示を検討していきます。
気候変動によるリスクと機会への対応(シナリオ分析)
★「短期」は2025年まで、「中期」は2030年まで、「長期」は2050年までと定義しています。
リスク種別 | カテゴリー | 当社の事業におよぼすリスク | 顕在化が見込まれる時期* | 主な取組み(リスクへの対応策) |
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移行リスク 主として1.5℃シナリオを想定 |
政策・法規制リスク | カーボンプライシング(炭素税導入や排出権取引増大等)によるコスト負担の増加 | 中期~長期 |
●製造設備の省エネ機器への転換や再生可能エネルギーの利用を促進することでCO2排出量の削減を加速し、コスト負担の増加を抑制 |
●2023年2月より国内全主要拠点の購入電力の100%を再生可能エネルギー由来に切り替えたことにより、将来国内で1tあたり10,000円の炭素税が導入された場合、同納税額は10,000円×20,000t=2億円減少する見込み |
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●今後のインターナルカーボンプライシングの導入や排出権取引の実施を想定した財務的影響の試算までは完了 |
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製造拠点を展開する国内外のCO₂排出削減に向けた政策・法規制強化による対応コスト負担の増加 | 短期~長期 |
●綿密な情報収集や各国政府機関との折衝により遅滞なく対応し、現地コミュニティの一員として気候変動への対応を継続 |
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物理的リスク 主として4℃シナリオを想定 |
急性リスク | 自然災害の増加による設備の損傷 | 短期~長期 |
●研究開発の中枢拠点であるTOK技術革新センターおよび流通センターで、水リスクへの対応を継続 |
●「tok Vision 2030」の実現に向けた「tok中期計画2027」における設備投資計画においても、各種災害に対するBCPやレジリエンスの強化を重視 |
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慢性リスク | 地球温暖化による工程温度 管理コスト・製品温度管理コ ストの増大 |
短期~長期 |
●工程温度や製品温度の管理において、より効率的で費用対効果の高い手法・手段を開発 |
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地球温暖化による水ストレス の増大、水確保の困難 |
中期~長期 |
●生産活動による水消費を必要最小限に抑制し、排出水質を維持・向上させる取組みを国内外で継続 |
機会 | 顕在化が見込まれる時期* | 主な取組み(機会の取り込み) |
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半導体の微細化の進展 1.5℃シナリオ、4℃シナリオの双方を想定 |
短期~長期 |
●7nm~2nmプロセス向けEUV用フォトレジストの安定供給、拡販、開発、世界トップクラスシェアの堅持 |
パワー半導体市場の拡大 1.5℃シナリオ、4℃シナリオの双方を想定 |
短期~長期 | ●g線・i線用フォトレジストの世界トップシェアの堅持 ●パワー半導体向けg線・i線用フォトレジストの安定供給、拡販 |
さらなる低消費電力を実現する 次世代パワー半導体の開発ニーズの増大 1.5℃シナリオ、4℃シナリオの双方を想定 |
中期~長期 |
●市場が拡大し始めたSiC(炭化ケイ素)パワー半導体向けg線・i線用フォトレジストにおける優位性強化/さらなる開発・販売の強化 |
光電融合技術の進展による光半導体市場の立ち上がり 1.5℃シナリオ、4℃シナリオの双方を想定 |
中期~長期 | ●従来半導体に比べ圧倒的な省電力を実現する光半導体向け材料の開発・販売の強化 |
*統合レポート2024 P5注記ご参照