TCFD提言への賛同
当社は、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指すことを2022年2月に宣言し、国内全主要拠点における購入電力の100%を再生可能エネルギー由来に切り替えるなど、脱炭素・カーボンニュートラル投資に注力しています。また、TCFDに基づくシナリオ分析において、気候変動にまつわるリスクと機会への対応による財務的影響の定量化に向けた取組みを進めています。
「 目指す社会」と気候変動関連マテリアリティ
幸福度にあふれる「豊かな未来」の実現を目指す当社は、その実現のための一つの鍵となるのが「カーボンニュートラル」であると考えています。そして、これらを見据えた長期的取組みの起点として、「TOK Vision 2030」からバックキャストしたマテリアリティ「将来世代を見据えた地球環境の保全」および「tok 中期計画2024」への取組みに注力しています。
ガバナンス
取締役社長のトップダウンおよび担当取締役(環境統括責任者)の管轄のもと、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた諸施策に注力しています。2022年に新設した「取締役協議会」において、各部署長・執行役員・取締役が気候変動対応を含むESG課題について幅広く議論しているほか、各執行役員は、脱炭素を含むサステナビリティ課題への取組みを主導しています。
これら一連の活動を取締役会がモニタリングし、足元の気候変動関連課題や「リスクと機会」の変化を踏まえながら、対応策をアップデートしています。
リスク管理
上記ガバナンス体制、および取締役社長と各本部長で構成された「リスク管理委員会」を中心とするリスクマネジメント体制のもと、取締役社長を最高責任者として気候変動対応関連の各種活動のPDCAを徹底し、継続的なリスク管理に取り組んでいます。
戦略(シナリオ分析)
当社は、21世紀末までの平均気温の上昇について、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示す「1.5℃シナリオ」および「4℃シナリオ」を参照のうえシナリオ分析を進め、当社グループ事業全体のリスクと機会について、機会の定量分析を含めて把握・整理しました。
その結果、「1.5℃シナリオ」「4℃シナリオ」のいずれにおいても、半導体の微細化や積層化、パワー半導体への需要をはじめとする豊富な事業機会を取り込みながら脱炭素に貢献し、今後想定される物理的リスクにも適切に対応しレジリエンスを強化していくことで、当社グループが中長期的に企業価値を向上させることは十分可能であることを再認識しました。
指標と目標
「長期環境目標」を2020年に策定し、「2030年までに、エネルギー起源CO2排出原単位を2019年比15ポイント削減」することを目指しています。2022年12月期は、各種環境関連データを効率的かつスピーディに収集・一元管理し、スムーズなデータ分析が可能なクラウドシステムを導入しました。
また前述のシナリオ分析において、今後のインターナルカーボンプライシングの導入や排出権取引の実施を想定した財務的影響を試算しており、今後は中長期業績目標やその進捗状況/見通し等との連動性も深めつつ、適切なタイミングで開示していく予定です。
気候変動によるリスクと機会への対応(シナリオ分析)
リスク種別 | カテゴリー | 当社の事業におよぼすリスク | 顕在化が見込まれる時期* | 主な取組み(リスクへの対応策) |
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移行リスク 主として1.5℃シナリオを想定 |
政策・法規制リスク | カーボンプライシング(炭素税導入や排出権取引増大等)によるコスト負担の増加 | 中期~長期 |
製造設備の省エネ機器への転換や再生エネルギーの利用を促進することでCO2排出原単位の削減を加速し、コスト負担の増加を抑制 |
2023年2月より国内全主要拠点の購入電力の100%を再生可能エネルギー由来に切り替えたことにより、将来国内で1tあたり10,000円の炭素税が導入された場合、同納税額は10,000円×20,000t=2億円減少する見込み |
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今後のインターナルカーボンプライシングの導入や排出権取引の実施を想定した財務的影響の試算までは完了 | ||||
製造拠点を展開する国内外のCO2排出削減に向けた政策・法規制強化による対応コスト負担の増加 | 短期~長期 | 綿密な情報収集や各国政府機関との折衝により遅滞なく対応し、現地コミュニティの一員として気候変動への対応を継続 | ||
物理的リスク 主として4℃シナリオを想定 |
急性リスク | 自然災害の増加による設備の損傷 | 短期~長期 | 研究開発の中枢拠点であるTOK技術革新センターで台風による浸水リスクが顕在化したこと(2019年)を踏まえ、短期リスクとしての対応を継続 |
「TOK Vision 2030」の実現に向けた「tok中期計画2024」における設備投資計画においても、各種災害に対するBCPやレジリエンスの強化を重視 | ||||
慢性リスク | 地球温暖化による工程温度 管理コスト・製品温度管理コ ストの増大 |
短期~長期 | 工程温度や製品温度の管理において、より効率的で費用対効果の高い手法・手段を開発 | |
地球温暖化による水ストレス の増大、水確保の困難 |
中期~長期 | 生産活動による水消費を必要最小限に抑制し、排出水質を維持・向上させる取組みを継続 |
機会 | 顕在化が見込まれる時期* | 主な取組み(機会の取り込み) |
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半導体の微細化の進展 1.5℃シナリオ、4℃シナリオの双方を想定 |
短期~長期 | ●回路線幅7nm~3nm向けEUV用フォトレジストの安定供給、拡販、開発、世界トップシェアの堅持 ●回路線幅7nm~2nm向けEUV用フォトレジストの提供により期待できる半導体の低消費電力化効果(2030年見込み) : ▲105TWh(2030年の世界の消費電力量予想の0.3%に相当)*2 |
パワー半導体市場の拡大 1.5℃シナリオ、4℃シナリオの双方を想定 |
短期~長期 | ●g線・i線用フォトレジストの世界トップシェアの堅持 ●パワー半導体向けg線・i線用フォトレジストの安定供給、拡販 |
さらなる低消費電力を実現する 次世代パワー半導体の開発ニーズの増大 1.5℃シナリオ、4℃シナリオの双方を想定 |
中期~長期 | ●市場が顕在化し始めたSiC(炭化ケイ素)パワー半導体向けg線・i線用フォトレジストにおける優位性強化/さらなる開発・販売の強化 ●GaN(窒化ガリウム)/Ga2O3( 酸化ガリウム)パワー半導体向けg線・i線用フォトレジストの開発・販売の強化 ●SiC/GaNなど次世代パワー半導体向けg線・i線用フォトレジストの提供により期待できる太陽光・風力発電システム/EV/データセンターの消費電力削減量 (2030年見込み): ▲155TWh(2030年の世界の消費電力量予想の0.4%に相当)*3 |
エネルギー循環型システムへのニーズの拡大 1.5℃シナリオ、4℃シナリオの双方を想定 |
中期~長期 | ●エネルギー循環型システム「ケミカルループ」の開発・販売・社内活動への転用を加速 |
*1 「短期」は2024年まで、「中期」は2030年まで、「長期」は2050年までと定義しています。
*2 「データセンターサーバーの消費電力量」「ムーアの法則の継続効果」をキーファクターとして試算。ハイエンドロジック半導体の用途としてデータセンターのみを対象とし、DC以外に設置されたサーバーやラップトップPCを除外
*3 「風力/太陽光発電およびEV、データセンターの消費電力量」と「SiC、GaN等による次世代パワー半導体の普及」をキーファクターとして試算。鉄道車両、商用車等は対象に含まず