社長メッセージ

取締役社長 種市順昭

ここぞと決めたら、粘り強くやり遂げる

ロングランの研究開発と、事業ポートフォリオ変革が結実

2025年は東京応化の企業価値向上への道筋において、様々な「執念」が実を結んだ年となりました。
その代表例が、半導体の3次元実装関連事業(以下、「WHS」(ウエハハンドリングシステム))と、それにまつわるM&E(Materials & Equipment)戦略です。この事業は、2次元半導体の微細化が技術的限界に近づくことを見据え、半導体を縦方向に積層することでブレークスルーを図るTSV*1技術を核に、私自身が2005年に立ち上げた新規事業です。その後約18年間にわたり技術を磨いた一方、市場の立ち上がりが遅れ、事業としては苦しい時期が続きました。

しかし、2023年頃に生成AI向けGPUの普及により3次元実装市場が本格化してからは、当社WHS材料もキー材料として、急成長を始めました。足元では2027年までに2024年比700%*2の拡大を見込む成長ドライバーに変貌し、私が手掛けた新規事業の中でも成功事例となっています。

こうした成功の最大の要因は、当社ならではのカルチャーである「ロングランの研究開発」にあります。経営として技術トレンドを理解し「将来必ず必要になる」と見定めた領域については、たとえ市場の顕在化時期が見えずとも、好奇心を持って発展の可能性を探り、技術(知的資本・製造資本)、人財(人的資本)、人脈(社会・関係資本)、財務(財務資本)を粘り強く投下してバリューチェーンを創り込む。そのうえで、強い信念と情熱を持った人財が、顧客やサプライヤーと密に擦り合わせることで、日進月歩で技術を磨く。こうした取組みを約20年間積み重ねたことで、当社のWHS材料は、コアコンピタンス「世界最高水準の積層化技術」の1つとして大きな参入障壁を築き、マテリアリティ「イノベーションによる社会への貢献と企業価値向上」を体現しています。

一連の成果の背景にあったもう一つの取組みが、信念に基づく意思決定と事業ポートフォリオ変革です。1971年のプラズマアッシング装置を皮切りに装置事業に参入した当社は、「材料」「装置」「プロセス」の3つの視点で特性を合わせこむM&E戦略によって高度なソリューションを提供し、WHS装置・材料の双方で厚い顧客基盤を構築していました。しかしながら装置事業のみを単体で見れば、材料メーカーの発想で擦り合わせを徹底する開発スタイルが装置では逆に収益性を下げ、7期連続で赤字を計上するなど厳しい状況にありました。

そこで2023年、事業ポートフォリオ変革の一環として装置事業をAIメカテック社へ譲渡する一方、当社が同社株式の20%弱を取得のうえ持分法適用関連会社として密に連携することで、WHS材料とM&E戦略は継続するスキームを構築しました。この3次元実装の立役者になるという強い想いによる意思決定と事業ポートフォリオ変革こそが、のちのWHS材料の開花につながっているのです。

私は、こうした中長期にわたる粘り強い研究開発と事業ポートフォリオ変革の結実が、次なる新規事業の確立やさらなる事業ポートフォリオ変革、当社グループの長期的な企業価値向上につながることを確信しています。

*1 Through Silicon Via:シリコン貫通電極
*2 売上高ベース

人財の幸福度と企業価値を高め、「四方よし」の実現を目指す

企業価値向上に資する取組みのもう1つの事例が、2023年8月より導入した「東京応化グローバル社員持株会制度」です。
当社は1979年に社員持株会制度を導入し、以降、2001年のストックオプション制度、2012年の従業員持株ESOP信託の導入等により、企業価値向上に向けて会社と従業員が目線を合わせる取組みを強化してきました。しかし、これらはいずれもインセンティブとしての魅力や対象従業員の設定に改善余地があったことから、「東京応化グローバル社員持株会制度」を導入し譲渡制限付株式の付与を可能にすることでその魅力を高め、海外グループ会社を含む全従業員をインセンティブの対象としました。私が同制度によって実現したいことは、以下の2点です。

1点目は、企業価値向上に向けた「EBITDAマルチプル」の考え方を全ての従業員が理解し、同指標の最大化への取組みをグループ一丸で加速することです。そのためにも、まずは「EBITDA」について、tok中期計画2027やtok Vision2030で掲げた目標値の達成に向けて着実に取り組むほか、「マルチプル」については、資本市場から当社への期待値の合計であることを理解し、それを個々の事業活動レベルまで因数分解し、それぞれをさらに高めるというコンセプトのもと、半導体材料分野でのさらなる優位性と参入障壁の構築、ガバナンス実効性の追求、IR/SR活動の拡充など、直接部門/間接部門を問わず、全従業員による長期的な企業価値向上への取組みをさらに強化していく考えです。

2点目は、「顧客よし、従業員よし、社会よし、株主よし」からなる「四方よし」の実現です。例えば、「東京応化は誰のものか」という問いへの答えは、会社法に基づけば「株主の皆様のもの」となります。しかしこれを「東京応化は誰のためのものか」という問いに変えると、答えはかなり異なります。「従業員や顧客、そして、社会のためのもの」という色合いが強くなり、株主・投資家の皆様と利害が一致しない可能性も生まれます。私は、そうした利益相反を解消し、顧客、従業員、社会、株主・投資家の皆様の全ての幸福度を、株価や企業価値向上によって高めることを同制度の目標としています。 

この制度の構想を温め始めたころは、国内に前例が無く、導入にあたっては多くの壁がありました。国ごとに法制度や税制が異なるため制度設計は非常に複雑であり、「やりたいが実現できない」状態が長らく続いていました。そうした中で、大きな後押しとなったのがスズキトモ先生との出会いです。当社に来訪いただき、お話しいただいた内容に私は大きな勇気を与えてもらいました。「海外を含むグループ全従業員へ譲渡制限付株式を付与できる仕組みを何としても実現したい」という強い想い、つまり執念を、改めて強く持つきっかけになったのです。

その後は、外部専門機関の手厚いサポートや社内の総務担当者の尽力もあり、制度導入にこぎつけました。導入後、国内従業員の持株会加入率は従来の70%台半ばから90%台半ばへ大きく上昇したほか、海外従業員の加入率も70%台半ばで推移しています。今後は海外加入率のさらなる上昇を図るための現地従業員とのコミュニケーションや、国内外での社内IR活動により、同制度のさらなる実効性を追求していきます。

社内外のIR活動で、企業価値向上をドライブする

私が社内IR活動で特に重視したいのは、前述の「マルチプル」最大化に向けたPDCAサイクルの精緻化です。同制度はまさに「導入してからが真の勝負」であり、従来からの社外IRはもちろんのこと、今後は社内IRの巧拙も、長期的な企業価値向上に少なからず影響を与えると考えます。

2026年6月30日現在の当社の時価総額は、好調な市場環境の後押しもあり、直近3年間で約4倍に拡大し1.4兆円、PBRは5.8倍程度で推移していますが、私が就任以来注力してきた人的資本経営の真価を企業価値向上として結実させるのは、まさにこれからです。同制度をはじめとする数々の人財施策の強化と、社内外のIR活動を原動力に、さらなる企業価値向上に向けて、従業員と一体となって邁進していきます。

事業環境認識―リスクと機会/社会的インパクト

機会:好調な市場環境で、機会を最大限に取り込む

私は、現在世界が「AIによる産業革命」の進展局面にあり、今後AIが社会インフラとして機能していく中で、その中核的な推進役は半導体が担うと考えています。その証左として、2025年の世界のシリコンウエハ出荷面積は前年比5.8%増の129億7,300万平方インチとなったほか、今後も年5~10%程度の堅調な成長を続けることが見込まれています*3。

また、世界の半導体市場は2025年も過去最大規模へと成長し前年比26.2%拡大の795,640百万米ドルとなったほか、2026年にはデータセンター投資等によってさらに大きく拡大し、1兆5,000億ドルを超えることが予想されています*4。

このように、シリコンウエハ出荷面積の堅調な拡大をさらに大きく上回るペースで半導体市場が成長しているということは、現在の半導体市場の成長が、先端・高付加価値分野に牽引されていることを示唆します。よって当社は引き続き、ニッチな高付加価値分野に特化する創業時からのビジネスモデルのもと、tok中期計画2027の最重点目標である「先端レジストのグローバルシェアNo.1」の達成に注力し、2027年度のEBITDA目標720億円*5の達成、そして「tok Vision 2030」の実現に邁進していく所存です。

またこのことが、EBITDAマルチプルの拡大を通じてさらなる企業価値向上の基盤となり、人財の幸福度や「四方よし」の実現につながることは申し上げるまでもありません。


*3 出典:SEMI
*4 出典:世界半導体市場統計(WSTS)
*5 2026年2月に上方修正(600億円→720億円)

リスク:中国国産メーカーの台頭への対応

一方、当社グループを取り巻く足元の最大のリスクとして、中国・国産フォトレジストメーカーの台頭を認識しています。当社グループの中国向け売上高は他の海外地域と同様に年々拡大傾向にあるものの、近年は現地で多くの国産メーカーが誕生し、生産量/ 品質の双方で、日本メーカーへのキャッチアップに挑戦してきています。足元ではg線・i線用フォトレジストについては中国メーカーのシェアが着実に増大しており、このように既に顕在化したリスク、および今後先端分野でも顕在化する可能性のあるリスクへしっかりと対応することが、喫緊の経営課題となっています。

具体的には、まずは当社を含む日本メーカーが優位性を保っているArF/KrF用フォトレジストについては、引き続きこれまでの圧倒的な「擦り合わせ」の積み重ねによる品質の高さや、それを全ての量産ロットで実現する製造技術の優位性、そして、原材料サプライヤーと構築してきた強固なエコシステム等を堅持していくことで、参入障壁を保ち続けていく考えです。

また、当社はフルラインアップ戦略を展開する世界トップシェアメーカーとしてのブランド力やマーケティング力、情報収集力をフルに活用しながら、引き続き世界最高水準の微細加工技術・高純度化技術・積層化技術を顧客密着戦略によって擦り合わせることで磨き、最先端の付加価値を創造し続けるという「勝ちパターン」の優位性を、高め続けていく所存です。

インパクト:正のインパクトを最大化し、負のインパクトを最小化する

当社グループは引き続き、上記一連のリスクと機会への対応に注力しつつ、マテリアリティおよび中期経営計画への取組みを通じて社会への正のインパクトを最大化し、負のインパクトを最小化することによって持続的な企業価値向上を目指します。    

まず正のインパクトの最大化に向けては、足元では半導体の先端・高付加価値分野の成長が生成AIのさらなる進化を支えているほか、各種端末側で自律的に判断・機能する「エッジAI」や、ロボティクス・自動運転等を進化させる「フィジカルAI」の市場が本格的に立ち上がりつつあります。
これに伴い、半導体には「より膨大なデータを高速・かつ低消費電力で処理する能力」が求められるようになり、まさに当社グループが磨き続けてきた微細加工技術や積層化技術を適用できる領域が広がっていくことから、新たな社会的インパクトに貢献できることを楽しみにしています。また、こうした社会的インパクトの創出は、経営理念「社会への貢献」の実践そのものであり、従業員の個々のモチベーションと幸福度の向上につながることを確信しています。

一方、負のインパクトの最小化への取組みも地道に継続することで、企業価値拡大につなげていきます。足元ではスコープ3のCO₂排出量の算出をより精緻化・高度化するためのGX投資に注力し、現状のスコープ3関連開示をブラッシュアップするための準備を進めています。また、生産量の急拡大を背景に増加傾向にあった労災件数も、2年間取り組んだ「労働安全非常事態宣言」の効果等から改善に転じており、引き続き企業の義務である「労災ゼロ」への取組みを手を緩めず強化していくことで、さらなる企業価値向上に向けた基盤づくりを強化していきます。

真の実力=企業体質の強化に向けて

tok中期計画2027による「企業体質の強化」とマテリアリティへの取組み

中期経営計画の1年目であった2025年12月期の当社グループ業績は2期連続で過去最高を更新し、売上高は前述の世界のウエハ出荷面積の成長(5.8%)を大きく上回る前年比17.9%増、EBITDAも前年比35.7%増となったほか、最終年度の各種業績目標も上方修正するなど、順風満帆に見えるかも知れません。

しかし私は、この好業績の大部分は好調な事業環境、さらには円安で推移した為替のプラス影響といった外部要因によるものも多く占めると認識しています。もちろんコアコンピタンスである世界最高水準の微細加工技術や積層化技術、高純度化技術を磨き続けてきたことの成果は多大である一方、当社グループの真の実力である「企業体質」については、前述の「マルチプル」最大化に向けては多くの改善余地がある、と自戒しています。

「tokイズム」の維持・浸透に向けて

まず重点戦略1「従業員一人ひとりが心身ともに安全安心に働ける環境を構築する」(マテリアリティ「人財の幸福度の追求」と連動)について、エンゲージメント向上や労災撲滅の面では一定の成果を得られたものの、目に見えない「tokイズム」の維持・浸透に関しては課題があります。

具体的には、直近数年の半導体産業の加速度的な成長とフォトレジストの増産要請にお応えすべく、新卒・キャリアともに人財採用も急拡大した結果、「自由闊達」や「ロングランの研究開発」に代表される「tokイズム」の浸透が間に合っていないのではと危惧しています。現在、その打開に向けた新たな人財施策を準備中であり、速やかに実施していきます。

高位安定品質の「垂直立ち上げ」への挑戦

次に重点戦略2「強固なサプライチェーンを構築する」(マテリアリティ「半導体エコシステムの発展」と連動)については、現在、仁川工場(韓国)の新検査棟、阿蘇くまもとサイト、郡山工場(日本)、平澤工場(韓国)など国内外で大型増産投資を進めていますが、これらは2026年から2027年にかけて順次「垂直立ち上げ」を計画しています。

現在実現している高位安定品質の価値を損なうことなく新工場を垂直立ち上げしていくには、「量産品質の担保」「人財確保」等を極めて用意周到に進めていく必要があります。加えて、これら新規投資は基本的に2030年までの生産キャパシティを確保するためのものであり、その先を見据えた議論も始めなければなりません。

新たなグローバル戦略を構築中

続いて重点戦略3「マーケティング力の向上を通じて、顧客の深耕と開拓を進める」(マテリアリティ「イノベーションによる社会への貢献と企業価値向上」と連動)については、これまでコアコンピタンスとして培ってきた顧客密着戦略を、日本ありきではなくよりグローバルな視点で強化していく必要があります。足元では台湾、米国、韓国におけるそれぞれの重要顧客が自国だけでなく世界各地でのグローバル・多極化展開を加速しており、これまでのように現地の営業・開発担当者が日本・本社からの指示で動くだけでは顧客ニーズに応えきれないケースが増えています。

これを早急に解決することが、tok Vision 2030で掲げたThe e-Material Global CompanyTMの実現に向けた最大の課題の一つであると認識しています。足元では既に、海外顧客密着拠点にアサインした日本の人財を1拠点に長く駐在させず世界各拠点に動いてもらう施策を始めているほか、現地外国籍人財の層を厚くする取組みにも注力しています。これら一連の活動のベクトルを合わせるためにも、グローバル社員持株会制度等の人的資本強化施策をフル活用していく構えです。

失敗も許容しながら、長期視点の研究開発を積極化

そして重点戦略4「先端技術を追求し、TOKグループ独自の技術を開発する」(マテリアリティ「イノベーションによる社会への貢献と企業価値向上」と連動)では、引き続き世界最高水準の微細加工技術・高純度化技術・積層化技術、および高位安定品質を実現する生産技術を磨き込んでいくにあ
たり、足元で顕在化している顧客ニーズには応えられているものの、次なる微細化や積層化に向けての長期視点での研究開発をさらに積極化していく必要があります。今後も当社グループが「勝ちパターン」を描ける領域を営業と開発の融合によって見定めるとともに、「ロングランの研究開発」を失敗も許容しながら執念を持って続けることが、当社グループの長期的な企業価値向上のカギであると考えます。

社外取締役と、長期視点での財務資本戦略を議論

そうした失敗や挑戦を許容する風土を、財務面で維持するための重点戦略5「長期の研究開発と安定生産を実現する財務基盤を整備する」(マテリアリティ「サステナビリティガバナンスの進化」と連動)については、前述の通り多くの人財が当社グループに加わる中、EBITDAマルチプル最大化に向けた重点施策の1つであるROIC活動について、引き続き現場への浸透に注力していきます。

また、当社の近年のコーポレートガバナンスにおいては、社外取締役によるモニタリングが事業リスクやコンプライアンス等だけでなく、資本効率やグローバル財務戦略へと広がっています。例えば昨年の社債発行後には、元CFOである中島社外取締役から、グローバルベースでのキャッシュマネジメント高度化に関する提言があり、取締役会では、成長投資と財務規律の両立の観点から踏み込んだ議論を行いました。私は、こうした社外取締役との本質的な対話が、当社グループの持続的な企業価値向上を支える重要な基盤になっていくと考えます。

バリューチェーンのDXを加速

また、重点戦略6「新たな価値創造を見据えたデジタル基盤を整備する」(マテリアリティ「イノベーションによる社会への貢献と企業価値向上」と連動)については、バリューチェーンを支える4つの稼ぐ力である技術(知的資本・製造資本)、人財(人的資本)、人脈(社会・関係資本)、財務(財務資本)の各分野でのDXを加速しています。国内では取組みが加速度的に進んでいる一方、今後は海外でのDXを強化する必要があります。そのため、日本で進めてきた取組みを海外に応用していくほか、海外現地でのデジタル人財の育成やAI活用にも注力していきます。

幸福度やウェルビーイングを念頭に、社会と当社のサステナビリティを追求

最後に重点戦略7「SDGsに貢献できる企業文化を深耕する」(マテリアリティ「豊かな未来を見据えた地球環境への貢献」と連動)においては、引き続きtok中期計画2027の非財務KPI目標(従業員エンゲージメント指標およびCO2排出量)の達成に向けて地道に取り組むことで、「社会のサステナビリティ」と「当社グループのサステナビリティ」を両輪で推進するカルチャーのさらなる浸透を図ります。また、2030年まであとわずかとなり、その先の当社グループのサステナビリティのあり方を検討するうえでは、スズキトモ先生が示唆するウェルビーイングと幸福度はほぼ同義であることを踏まえ、SWGs*6も意識した取組みを視野に入れていきます。

*6 Sustainable Well-being Goals:持続可能なウェルビーイング目標。2030年に
達成期限を迎えるSDGsの次世代フレームワークとして注目されている日本発の国際
アジェンダ

tok Vision 2030の実現および2040年
「100年企業」に向けてtok中期計画2027

長期の企業価値向上に向けて、まずは隣接分野で勝負する

私も就任8年目を迎え、ここまでの企業価値拡大について一定の成果を得られたものの、今後も当社グループの長期的な企業価値向上に向けた布石を着実に打つことにもさらに注力していきます。その1つであり、2030年に向けた新たな事業セグメントの原型としてイメージしている5つの製品ポートフォリオ「フォトレジスト」「パッケージ周辺材料」「光学材料」「高純度化学薬品」「表面改質剤」のうち既に3つについては収益ドライバーとして確立していることから、足元では、それらの隣接分野であり、かつ既存事業との大きなシナジーを創出できる「表面改質剤」と「光学材料」に注力しています。まず表面改質剤については、半導体微細化の最先端領域の歩留まりを高めるキー材料として既に採用が積み上がっており、今後の海外現地開発および生産を着実に立ち上げながら収益拡大に注力します。

続いて光学材料については、当社が長年培ってきた「光をコントロールする技術」が活き、足元の社会的課題の1つであるデータセンターの消費電力低減や前述のエッジAI、フィジカルAIからのデータ伝送効率を飛躍的に高めるイノベーティブな技術として「光電融合」の市場が立ち上がりつつあります。当分野では当社が非常に高いシェアを持つイメージセンサー用フォトレジストの技術を応用することで高い付加価値を創出できるほか、2025年2月に完全子会社化したmicro resist technology GmbH社(ドイツ)(以下、「MRT社」)の独自技術も活かしていきます。

高まる地政学リスクに備え、欧州ネットワークを拡充

加えて、MRT社の買収は米中摩擦を中心とする地政学リスクの高まりへの対応策でもあります。同社は当社の海外顧客密着拠点と同様、開発・製造・営業の三位一体機能をあわせ持つことから、欧州市場への重要なアクセス拠点として密に連携していきます。本年2月にIrresistible Materials社(英国)とEUVリソグラフィの進展に向けた戦略的投資と共同開発パートナーシップを締結したのも、同様の文脈です。

「世界を変える」6つ目の柱を確立する

ここまで主として半導体関連事業についてお伝えしてきましたが、2040年の100年企業としての発展を見据えた長期的な企業価値向上に向けては、非・半導体関連市場での新規事業を6つ目の柱として加えることが最重要課題となります。そのため過去の統合レポートでお伝えしてきた「ライフサイエンス」「機能性材料」「脱炭素貢献技術」などを軸に、「世界を変える」新規事業を確立し、新たな社会的インパクトを創出することが私の当面の夢でもあります。実現に向けては、半導体関連領域以上に「ロングランの研究開発」と執念が求められるかもしれません。しかし、当社での40年超のキャリアのうち3分の1程度を新規事業開発に費やしてきた私は、逆にそれが楽しみでなりません。

東京応化の執念による長期的な企業価値向上に、是非ご期待ください。