社長メッセージ

統合思考の実践

「顧客密着戦略」の進化

2024年の世界の半導体市場は、自動車や産業用途向けは低迷したものの、生成AI向けを中心とする先端分野向け需要が大きく拡大し過去最大規模へと成長しました*1。このように半導体産業は、各時代の牽引役が次々と登場することで中長期的な成長を続けており、半導体メーカー間や材料メーカー間の競争も、年々激化してい ます。
そうした中2024年12月期の当社グループは、生成AI 向けの分厚い製品ポートフォリオを展開し、過去最高業績を更新しました。また、半導体前工程用フォトレジスト、半導体後工程関連材料、高純度化学薬品のいずれにおいても「高付加価値・先端分野」のシェアを拡大した結果、 ROEを前年から4.6ポイント高め、過去最高の11.8%とすることができました。加えて、世界最小の回路線幅の先端半導体向けであるEUV用フォトレジスト等の開発競争で勝ち続けるなど「世界の最先端」での強さを資本市場からも高くご評価いただいた結果、PBRも2倍超で推移しています。当社がこのように最先端分野で躍進できている理由はいくつかありますが、まずは代表的なものとして、コアコンピタンスの1つ「顧客密着戦略」の進化についてご説明します。当社は従来より海外大手顧客の近接地に「顧客密着拠点」を展開し、営業/開発/製造の三位一体によって迅速・丁寧・高次元に対応することで優位性を築いてきましたが、近年は半導体の微細化の進展によって技術難易度と品質要求水準が指数関数的に高まる中、開発サンプル品と同一の高品質を量産段階でも安定的に提供できるか否かが、採用の成否を大きく左右するようになりました。そこで当社は、世界最高水準の各種技術を「製品開発」に惜しみなく投入するだけでなく、量産化を見据えた「製法開発」もそれと同時並行で進め、「高位安定品質の量産体制」を迅速に整備することで採用を拡大しています。当社グループは今後も「顧客密着戦略」のスピードと質を高め続けることで、世界の最先端で勝ち続けていく所存です。
 *1 出典:世界半導体市場統計(WSTS)

拡大する社会的インパクト

先端品である2nm半導体の量産が始まると、人類に様々なベネフィットがもたらされる見込みです。私が一昨年の統合レポートでお伝えしたように、コンピュータ1演算当たりの消費電力やCO2排出量が減るだけでなく、データサーバーや生成AI、自動運転の「応答速度」がさらに上昇し、 社会の至る所で利便性や安全性が高まるはずです。そして、 お客様は当社の「高位安定品質」の材料を使っていただくことで「歩留り改善」による「コスト低減」を実現し、最先端半導体のベネフィットがより安価で、より多くのエンドユー ザーに届けられるようになります。その結果、本レポート の巻頭で示した「世界の労働時間の削減」「世界のGDPの 成長」といった社会的インパクトの創出が、大いに期待できるのです。加えて、回路線幅1nm台の半導体の量産が始まれば、「エッジAI」が社会の隅々に浸透しロボットがより自律的に行動できるようになり、より大きな社会的インパ クトの創出を期待できます。
このように、半導体の進化には、「これができたからもう十分」という「到達点」が存在しません。各時代の極限に挑むか否かは、常に「どれだけコストをかけることで、どれだけの社会的インパクトを生み出せるか」といった視点で判断され、検討段階では「得られる特性よりもコストが高すぎて、実用化は困難だ」と見なされるケースも少なくありません。しかし、いざ作って実装してみると、想定をはるかに超えるベネフィットや社会的インパクトがもたらされることが分かり、新たな市場が生まれます。半導体産業は、 まさにこうしたサイクルで進化と拡大を続けてきたのだと私は考えます。このサイクルは今後も続くことから、当社グループは引き続き半導体用フォトレジストの世界トップ シェアメーカーとして半導体産業の一翼を担い、お客様とともにさらなる社会的インパクトの創出に邁進します。

統合思考の実践こそが勝利につながる

世界の最先端領域で当社グループが勝ち続けている戦略的な理由は前述の通りですが、もう1つの理由として、当社ならではのマインドのあり方――すなわち、経営理念の実践についてお話しさせていただきます。
当社の経営理念は、「自由闊達」「技術のたゆまざる研鑽」「製品の高度化」「社会への貢献」の4つで構成され、その内容はパーパスとともに巻頭でお示ししています。これらは1986年の株式上場を契機に、投資家の皆様や従業員にわかりやすく伝えるために4つに体系化したものであり、もともとの原型は、創業者・向井繁正が掲げた次の 一文に託されています。――「自由闊達」な社風のもと「技術のたゆまざる研鑽」にはげみ「製品の高度化」をひたすら追求し、すぐれた製品を供給することにより「社会への貢献」を果たす――つまり、当社のあらゆる活動が最終的には「社会への貢献」に帰結するという統合思考が、創業時からのDNAとして当社の隅々に根付いているのです。
例えば開発部門では、まずお客様が考えていることや求めていることを丁寧に聞き取り、把握し、理解したうえで技術を進化させていきます。これはまさに「技術のたゆまざる研鑽」であり、その結果として開発サンプルや製品のレベルが上がり、顧客ニーズに応えるものへとグレードアップされていきます。そして採用に至ったとき、エンジニアの脳内で「ドーパミン」が一気に分泌されます。それは、自身の成果が最先端半導体を通じて「社会への貢献」「社会的インパクトの創出」へとつながるという確かな実感があるからです。このドーパミンは、当社がマテリアリティの一つに掲げる「従業員の幸福度」の一つのかたちでもあります。
営業部門においても、お客様の声を社内へ的確に伝え、技術部門と連携することで「技術のたゆまざる研鑽」を推進します。納品後には「製品の高度化」が十分に実現できているかについてお客様の率直な声を聞き出し、社内にフィードバックするとともに、特に営業戦略部では、社会のニーズと当社のリソースの双方を俯瞰し、「次に大きな社会的インパクトを望めるのはどの領域であるか」を統合思考に基づくマーケティングによって見定め、経営資源を配分していきます。このように、お客様や市場と直接向き 合う部門では、常に統合思考に根差した活動によって勝利をつかんでいるのです。
また、管理部門では、営業・開発・製造が高度な製品づくりに集中できるよう、間接業務をしっかりと担うことで 統合思考の実践を支えています。
当社グループはこのように、すべての現場が経営理念と統合思考に基づいて行動することを84年間貫いてきました。私はこれこそが、世界の最先端で勝ち続けている根本的な理由であると確信しています。

人的資本への投資が 企業価値向上につながることを実感

そして、こうした統合思考の実践を日々担っているのは、 まさに人財にほかなりません。当社グループは、2022年よりマテリアリティの一つとして「人財の幸福度の追求」を掲げ、役員報酬KPIに従業員エンゲージメント指標を導入するなど、全社一丸となって人的資本投資を加速させてきました。
人事制度の刷新や教育・研修制度の強化といったソフト面での改革に加え、各拠点のリニューアルなどハード面での改革にも注力しています。研究開発・生産拠点におけるオープンスペースやラウンジの増設により、現場の人財がより快適・安全な環境のもとで力を発揮できるようにするとともに、社内コミュニケーションの質と量を高めることにも腐心してきました。
その成果として、2024年度はエンゲージメントスコアが大きく上昇しました。実際、開発の中枢であるTOK技術革新センターに立ち寄ると、従業員がラウンジでコーヒーを片手に活発なディスカッションを交わす光景をよく目にします。そこには、経営理念の一つであり、当社カルチャーの中核をなす「自由闊達」な精神が、さらに深く根づきながら広がっていることを実感しています。
そして最近は私自身もそうしたコミュニケーションの輪に加わりながら、こうしたカジュアルな対話が当たり前になった時期と、当社が世界の最先端でトップポジションを獲得し、PBRが上昇した時期が重なっていることに気づかされています。まさに、人的資本への投資が企業価値向上につながっていることを強く実感しています。
こうした成果は国内だけでなく、韓国・台湾・米国などの海外拠点を訪れるたびに、2023年8月に導入した「東京応化グローバル社員持株会制度」の効果をひしひしと感じています。海外法人では従来、東京応化という日本企業の「子会社の従業員」として、一線を引いたような働き方が少なからず見受けられていました。しかし現在、若手の外国籍従業員と話すと、彼らは自分たちが東京応化グループの一員であるという「当事者意識」を強く持ち、 積極的にディスカッションに参加する姿が目立つようになりました。「自由闊達」な風土が、海外現地にも確実に浸透しているのです。
これら一連の「人的資本投資の成果」は今後ますます積み上がり、当社グループの途轍もない成長ドライバーとしてさらに力を発揮していくはずです。そして、人的資本の投資を当社だけの成長と企業価値向上だけでなく、より大きな社会的インパクトの創出による「幸福度が高い社会」の実現につなげていくことが、私の願いでもあります。

新たな コアコンピタンスの 確立

「ロングラン」の取組みが大きく開花

昨年の統合レポートでもお伝えした当社の「半導体後工程関連材料」の強みは、2024年12月期にさらに進展、顕在化しました。生成AI向け最先端GPU用のパッケー ジ材料や、TSV向けWHS関連材料の需要が大きく伸長した結果、後工程関連材料の売上高は前期比45%増となり、製品セグメントの中で最も高い成長率を記録しました。これに3D-NAND向けKrF用フォトレジストを加えた各種材料はいずれも高いマーケットシェアと競争力を有することから、このたび、当社のコアコンピタンスに「世界最高水準の積層化技術」を加え、積極的に打ち出すこととしま した。微細加工を中心とする前工程の技術的難易度が年々上昇する中、今後の半導体の進化においては、積層化を中心とする後工程技術の発展が不可欠です。今後は積層化技術もコアコンピタンスとして磨き続けることで、 半導体産業の持続的な成長に貢献していきます。
また、そもそもパッケージ材料は30年以上、TSV向け WHS関連材料は20年ほど前から、当社が「細く長く」「粘り強く」取り組んできた事業です。いずれもなかなか市場が立ち上がらず、「いつかは来るだろう」と思いながらも黎明期が続いていました。とはいえ、フリップチップなど パッケージの高度化が徐々に進んだことにより、少しず つ事業としての兆しが見え始め、お客様と信頼関係を築きながら地道に製品供給を続けていたところへ、生成AI 市場の急成長によって一気に需要が拡大したのです。つまり、半導体の積層化という長期的な進化の方向性を見据え、20~30年前から粘り強くコアとなる技術を磨き続け、提案し続けてきた結果が、現在の成果につながっています。まさに、当社のカルチャーの一つである「ロング ランの研究開発」が実を結んだ代表的な事例の1つです。 そして何より私自身が、TSV向けWHS材料を含む半導体の3次元実装装置の開発を2005年頃から主導してきた当事者であり(装置事業は2023年に譲渡)、こうした「ロ ングランの研究開発」の裏にある苦しみや葛藤を、身をもって経験してきました。当時は前工程材料に比べ売上規模も小さく、装置事業も損益分岐点ぎりぎりの状況が続き、同僚から揶揄されることもありました。それでも上司からは「諦めずに続けてみろ」と機会を与え続けてもらい、その結果が、現在の「積層化技術」という新たなコアコンピタンスの確立につながっています。譲渡先で展開されている3次元実装装置も成長しており、当社のWHS関連材料の今後の伸びにも期待ができます。
そして現在の当社グループにも、20年前の私のように、 まだ顕在化していない市場に粘り強く挑む従業員が数多く存在します。かつて私が「自ら調べ、自ら判断し、自ら 行動できる」自由闊達な環境と挑戦の機会を上司から与えられたように、いまの若い世代にも、そのような環境と機会をしっかりと提供したいと考えています。社員全員が「自由闊達」に働くことができる環境づくりこそが、私の最大の使命です。そうした想いのもと、当 社は「tok Vision 2030」の実現に向けて、「フォトレジスト」「パッ ケージ周辺材料」「光学材料」「高純度化学薬品」「表面改質剤」「新規事業」の6つの柱からなる新たな製品ポートフォリオを育てていく考えです。市場がまだ大きく顕在化していない分野も敢えて含めることで、全ての人財に光を当てることを主眼としています。

tok中期計画2024 の総括

定量・定性の全ての目標を達成し、 過去最高業績を更新

上記一連の統合思考経営のもと、「tok Vision 2030」からのバックキャストで策定し、2024年12月期に終了した「tok中期計画2024」では、2年目こそ顧客の生産調整等の影響を受けて減収となりましたが、前述の通り半導体前工程用フォトレジストと後工程関連材料の双方が大きく伸長し、高純度化学薬品についてもグローバルでの供給体制を整備し製品シェアを拡大した結果、全ての定量目標を達成することができました。
また、人的資本投資の拡充による「人を活かす経営」や、 4つの「稼ぐ力」をデジタルで活性化させる取組み、ガバナンスの実効性向上に向けた改革を進めることができたほか、カーボンニュートラルへの取組みも加速するなど、全社戦略「健全で効率的な経営基盤の整備」についても 全ての定性目標をクリアし、着実に成果を上げることができました。「tok Vision 2030」の達成に向けた1stステップは、総じて順調に推移したと申し上げられます。

事業環境認識

拡大し続ける機会とリスク

当社が2024年2月に「tok Vision 2030」の売上高とEBITDA目標を1.7倍に上方修正し、ROE目標を3ポイント引き上げた最大の根拠の1つである「世界の半導体市場の拡大」は、足元で順調に進展しています。2024年は前年比19.7%拡大し630,549百万米ドル*2となったほか、 2030年には、2024年の約1.6倍の1兆ドルに成長すると予想されています*3。当社のさらなる社会的インパクトの創出と持続的な企業価値向上にまつわる「機会」は、引き続き拡大し続けていると申し上げられます。
一方、機会と表裏一体である「リスク」についても拡大する状況が続いており、気候変動リスクと地政学リスクは直近1年間でますます深刻化しているほか、足元では、当社固有のリスクとして2つのリスクに対応しています。
1つ目が、米中対立のさらなる激化と、中国の国産フォトレジストメーカーの台頭です。世界有数の半導体市場である中国で当社は2024年12月期に過去最大の売上高を計上した一方、足元では米中対立に起因する輸出規制がさらに厳格化し、フルラインアップ戦略を展開する当社にとって今後の成長の鈍化要因として懸念されます。当社はこうした中国市場の状況に対し、輸出規制については 日本政府の方針に全面的に従う一方、製品戦略において は、高付加価値な先端品の開発能力と量産時の高位安定品質を生命線として磨き続けることで、優位性を維持していく構えです。特に高位安定品質を実現する生産技術は、当社をはじめとする国内フォトレジストメーカーと国内原材料サプライヤーが長年の「擦り合わせ」によって構築してきたエコシステムの賜物であり、顧客の歩留まりを改善 することで、より大きな社会的インパクトの創出につながることは前述の通りです。当社は今後も、世界最高水準の微細加工技術/高純度化技術/積層化技術に加え、高位安定品質を実現する生産技術を原材料サプライヤーの皆様とともに磨き続けることで参入障壁を高め、半導体用フォトレジストの世界トップシェアメーカーのポジションを堅持する所存です。
加えて、機会への転換を図っているもう1つのリスクが、 PFAS*4への対応です。PFAS規制については半導体産業への法制化は2038年以降と見られるものの生物多様性への影響も懸念されており、現在のサプライチェーンの持続可能性におけるリスク要因となっています。代替物質への置き換えが競争ポイントの1つとなっていることから、当社は数年前からPFASフリー製品の研究開発に積極的に取り組んでおり、一部顧客による評価が進んでいます。今後は先端品についてもPFASフリー製品の開発を加速することでリスクを成長機会に転換し、当社製品のさらなるシェア 向上につなげていく考えです。
*2 出典:世界半導体市場統計(WSTS)
*3 出典:SEMIジャパン
*4 Per- and polyfluoroalkyl substances:ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物酸。日用品、およびフォトレジストを含む半導体材料や半導体製造装置に幅広く用いられる一方、人体や生物多様性への影響が懸念されている物質

ERM部とリスク管理委員会を核に、 リスク対応力が着実に進化

これら一連のリスクへの対応においては、2024年4月に新設したERM部が着実に機能し、輸出規制やPFASへの対応のほか、災害発生時のBCP対応の強化を含め当社が対峙する全てのリスクと対応策を一元的に統括しています。加えて、私が委員長を務めるリスク管理委員会の開催頻度も年2回から年4回に上げることで、激しい環境変化に全社を挙げてスピーディに対応する体制を構築し、当社グループ全体としてのリスク対応力を進化させています。
そして、ここまでお伝えした「リスクと機会」の認識のも と、当社が社会にもたらす「正のインパクト」を最大化し、「負のインパクト」を最小化することで企業価値の最大化を目指すために実施したのが、新マテリアリティの特定です。

新マテリアリティ

サステナビリティガバナンスの進化と 企業価値向上に向けて、深い議論を展開

新マテリアリティの特定については新中計の策定に先立って着手し、取締役会メンバーに執行役員と関係部署長・担当者を加えた「取締役協議会」で議論を重ねました。特にサステナビリティ経営とマテリアリティの関係性や、人権対応と「人財の幸福度」の関係性、サプライチェーンとESGの紐づけ方などについて社外取締役も含めて深い議論を展開しつつ、「tok Vision 2030」や新中計「tok中期計画2027」と戦略/内容/コンセプト/言葉の表現を含め強く連動させることを念頭に、5つの新マテリアリティにまとめました。いずれも、前マテリアリティの骨格を引き継ぎながらも外部環境や経営戦略の変化に合わせて改定し、当社の最新の「リスク」「機会」「インパクト」の状況を適切に反映することで、今後の企業価値向上をドライブするものへと仕上がったと自負しています。
特に前マテリアリティからの変化が大きい「サステナビリティガバナンスの進化」は、取締役会によるサステナビリティへの関与をさらに高め、パーパス「社会の期待に化学で応える」のもとで統合思考経営を全社で加速していく決意を表すものです。また、「豊かな未来を見据えた地球環境への貢献」「半導体エコシステムの発展」は、それぞれ経営ビジョンに掲げた「豊かな未来」「The e-Material Global Company™」 と強く連動させることを意図しています。そして、「イノベー ションによる社会への貢献と企業価値向上」は、経営理念「社会への貢献」と企業価値向上を敢えて直接的に紐づけることで、冒頭でお伝えした「世界の最先端で勝ち続ける」ことによる統合思考の実践への意志を込めています。

tok中期計画2027

統合思考経営のさらなる加速に向けて、 マテリアリティと中計を密接に連動させた 「非財務の定量目標」を設定

2025年度からスタートした新中計「tok中期計画2027」は、5つの新マテリアリティと密接に連動させた「7つの重点戦略」を推進することで、「6つの定性目標」と「6つの定量目標」の達成を目指すものです。「7つの重点戦略」をマテリアリティの「主な取組み」として組み込んでいるほか、6つの定量目標のうち2つを非財務目標(従業員エンゲージメント指標とCO2排出量削減目標)とすることで、統合思考経営のさらなる加速を目指します。ここでは新中計のコアとなる「7つの重点戦略」について、私自身の言葉で説明いたします。
 戦略1「従業員一人ひとりが心身ともに安心安全に働ける環境を構築する」では、各人財の心理的安全性を確保するとともに、より多くの人財が「働きやすく、働いていて楽しい」と感じられることを目指し、さらなる人的資本投資に注力します。その一環として管理職と部下のコミュニケーションのあり方を強化するほか、ハード面での積極投資も継続します。
戦略2「強固なサプライチェーンを構築する」では、顧客密着をさらに進化させます。設備投資が嵩むエレクトロニクス機能材料では拠点集約型モデル、輸送効率が重要な高純度化学薬品では地産地消型モデルを強化するほか、前述のサプライヤーとのエンゲージメントを深化させていきます。
戦略3「マーケティング力の向上を通じて、顧客の深耕と開拓を進める」では、市場全体を俯瞰しつつ、個々の有望分野を丁寧に育てていきます。その成果を顧客の深耕と新規開拓につなげるほか、これを全社で推進するための組織の拡充や先行投資にも注力します。また、営業と開発の融合は前中計で十分に進んだため、2025年より役員兼務体制を解き、マーケティングの次なる進化に向けた当戦略に邁進します。
戦略4「先端技術を追求し、TOKグループ独自の技術を開発する」では、前述の通り世界最高水準の微細加工技術/ 高純度化技術/積層化技術のほか、高位安定品質を実現する生産技術を磨き込んでいきます。
戦略5「長期の研究開発と安定生産を実現する財務基盤を整備する」では、過去最大となる760億円の設備投資 と520億円の研究開発投資など、必要領域にスムーズに資金を投下できる盤石な財務基盤を構築します。
戦略6「新たな価値創造を見据えたデジタル基盤を整備する」では、デジタル技術を活用し、生産や開発の効率向 上、プロセスの見える化を進めることで、経営全体の効率化とより大きな価値創造を図ります。
戦略7「SDGsに貢献できる企業文化を深耕する」では、「社会のサステナビリティ」と「当社のサステナビリティ」を両輪で推進するカルチャーのさらなる浸透を図ります。このたび当社の中計として初めて非財務の定量目標を設定したのもその一環であり、サステナビリティと成長戦略のさらなる融合に注力します。今後も、当社グループの統合思考経営によるさらなる企業価値向上に、是非ご期待ください。