化学物質管理

化学物質管理

化学物質の管理は、社会的責任の観点からも当社にとって最重要課題の1つです。法令遵守はもとより、世界的に広がる環境問題も意識しながら、サプライチェーンにおける化学物質を的確に管理できるよう、グループ一丸となって取り組んでいます。当社は、経営理念をかみ砕いた「TOKグループの信条」の1つとして「地域社会・全世界の共同社会に対する責任」を定め、地球温暖化防止、化学物質の管理、資源の有効活用・廃棄物削減等の環境負荷に関する取組みの推進、すなわちプロダクトスチュワードシップ活動の強化を進めることで、マテリアリティ「サプライチェーン・サステナビリティ」を実現していきます。

化学物質情報管理システムの構築

当社グループで扱う様々な化学物質を厳格に管理するために、2005年より化学物質管理システムを運用し、様々な物質情報や多岐に渡る法令情報を収集することで化学物質の一元管理を行っています。2022年は各国環境法令対応を強化すべく、化学物質管理システムの改修を行いました。具体的には、扱う化学物質が各国の様々な法令情報に適合するか否かを迅速に判断する機能を導入し、本格運用となる2023年以降において、化学物質の調査効率向上の一助となる見込みです。

化学物質管理体制の継続的な強化・運用

当社は、レスポンシブル・ケアの重要な柱であるプロダクトスチュワードシップ活動として、サプライチェーンにおいて適正に化学物質情報を伝達する体制の維持・強化に取り組んでいます。各国における法令規制や顧客要求に対応するために管理するべき化学物質を「TOKグループ化学物質管理基準」において明確化し、サプライチェーンにおける化学物質情報伝達の適正化を図る手段として活用しています。この基準は一度決めれば未来永劫変化なく継続使用できるというものではなく、時々の情勢に応じた最新の情報に更新する運用であることが求められます。

2022年は「TOKグループ化学物質管理基準」を第8版へと改訂し、国内外の環境規制法令の最新情報を反映したほか、サプライヤー向け回答フォーマットも改訂しました。各国の化学物質規制の最新情報を入手・管理するこれらの活動に加え、サプライヤーから原材料の化学物質情報を随時更新し、当社製品のSDSやラベルに展開することで、顧客への適時・正確な化学物質情報の提供をさらに強化していきます。

化学物質の適時・正確なリスク評価と適切な管理

化学物質のリスク管理とは、すなわち、「サプライチェーンの各段階におけるリスクの管理」と言い換えることができます。物の流れに応じた適切な情報提供が求められ、開発・製造・販売・廃棄の各段階において、法令遵守ならびにリスク管理のための手順を構築・運用しています。

①法令・条約改正情報入手

当社グループで扱う化学物質について、REACH*1規則や紛争鉱物*2 等の各国化学物質法令・規則における規制物質の該当有無を確認して使用可否判断を行うことで、法的要求事項を遵守する体制を整えています。また、将来的な規制強化が予測され使用禁止リスクの高い化学物質については、法令施行前に使用中止が完了するように全製品に対して削減計画を立案し、進捗を管理しています。

②調達段階

原料SDS*3は元より、「TOKグループ化学物質管理基準」*4における禁止物質が原材料に含有しないことを保証する「禁止物質不使用保証書」の提出をサプライヤーに要望しています。これらの書類の入手によりサプライヤーとの化学物質情報の共有を図り、原材料に含有する化学物質の正確な把握に努めています。

③開発段階

新規開発原料は法令情報に加え、TOKグループ化学物質管理基準に対して含有の有無を確認しています。さらに、新規開発製品は顧客要求項目についても同様の確認を行い、管理基準を超過した場合は代替計画を立案して削減に努めています。

④製造段階

製品の製造過程で使用する全ての原料に対し、労働安全衛生リスクアセスメントを実施しています。当社の製造環境に存在する危険有害要因を把握して危険有害性の程度を明確化し、さらにその危険有害要因をリスクレベルに応じ低減・除去する対策を実行しリスクを減少させることにより、従業員の適正な労働環境の維持を図っています。

⑤販売段階

製品出荷量を管理するERPシステムと製品組成データを持つ化学物質管理システムの連携により、化学物質の移動量を自動で算出し、日本の化審法*5や化管法*6、輸出先国の環境法令に従って適正な数量報告や用途申請を実施しています。また、SDS*3作成システムの活用により各国最新法令に対応したSDS発行を可能とし、使用者への適正な安全情報提供に努めています。

⑥廃棄段階

各拠点で発生した廃棄物は、分別を徹底し再資源化に取り組むとともに適正処理に努めています。廃棄物処理を委託している産廃業者には、廃棄物の性状や取り扱い時の注意事項などの情報を提供するため、廃棄物データシート(WDS)を配布しています。また、産廃事業者を定期的に訪問し、委託した廃棄物処理が契約書通り適正に行われているか現地調査を実施しています。

*1 REACH規則:Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicalsの略称。「生産者責任と予防原則」の徹底を目的に、化学物質の登録、
評価および認可を1つの統合したシステムで管理するEUの規制
*2 紛争鉱物:コンゴ民主共和国およびその近隣周辺の紛争地帯で産出されたスズ、タンタル、タングステン、金の4種の鉱物を指す。米国のドッド=フランク法(金融規制改革法)で規定されている。当社グループにおいては、この4種に加え、責任ある鉱物調達の観点からコバルトとマイカ(雲母)についても調査対象としている
*3 SDS:Safety Data Sheet/安全データシート
*4 TOKグループ化学物質管理基準:各国における法令規制や顧客要求に対応するために管理するべき化学物質を定めた管理基準
*5 化審法:化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(日本)
*6 化管法:特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律(日本)

TOPICS

世界的な環境規制に対する取組み

2022年はPOPs条約の付属書A(廃絶)にPFHxSが新たに追加され、欧州のREACH規則、米国のTSCAにおいてPFAS全般の規制が検討されるなど、難分解性・高蓄積性化学物質の世界的な規制化が広がりを見せた1年でした。国内では労働安全衛生法の改正、PRTR法の改正といった主要な化学物質管理法規の改正も相次いでいます。

私たちは自社の化学製品中における化学物質の情報や安全性を適切に当社顧客・従業員に開示していくとともに、環境に配慮しながら有益な化学製品の開発/製造していくことが必要です。特に2023年に欧州で公表されたPFAS規制は広範な化学物質を対象としており、私たち化学メーカーのみならず設備/容器包装材を含めた広範囲な業界にも影響をおよぼす見込みです。

規制を遵守するのはもちろんのこと、こうした環境規制による自社製品生産への影響を最小限にするべく、業界団体や規制当局とのコミュニケーションを通じた安全な取り扱いの情報提供を積極的に図っていきます。

PCB特措法への適切な対応

低濃度PCBについては、TOK技術革新センター、湘南事業所、御殿場工場の3拠点で、PCBを含む廃棄物を所定の保管基準に則し適正に保管・管理するとともに、行政への各種届出を行いました。2022年は、前年に作成したロードマップに沿い、全ての拠点で使用・保管している受電設備と廃棄物を法で定められた期間内(2027年まで)に処分するための活動を進めました。
今後も、各拠点ごとに事業活動に支障が生じないよう配慮した機器更新計画を策定し、段階的に処分を行っていく予定です。

※PCB:Polychlorinated Bipheny(l ポリ塩化ビフェニル)の略称で有機化合物の一種。かつては耐熱性、電気絶縁性に優れた化学物質として熱媒体、絶縁油、塗料などに使用されていたが、分解しにくく毒性が強いことから、1972年に製造が中止された。しかし現在も処理が進んでいないため、保管者には厳重な管理が義務づけられている

ステンレス製専用保管容器(相模事業所)

chemSHERPA(ケムシェルパ)への参画

経済産業省による発案とエレクトロニクス関連企業等数社の賛同により立ち上げられた製品含有化学物質の情報伝達スキーム「chemSHERPA(ケムシェルパ)」を、2017 年7 月より導入しています。製品含有化学物質情報の伝達が川上から川下まで確実かつ効率的に行える共通フォーマットの実現を目指す同スキームの運営団体JAMP*1には、当社を含む506会員 (特別協力団体:4)*2が会員として所属しており、化学物質の最新情報や動向を幅広く入手するなど、当社の化学物質管理のさらなる強化に活用しています。

※1 Joint Article Management Promotion-consortium:アーティクルマネジメント推進協議会
※2 2023年8月14日時点

紛争鉱物について

当社グループでは、取引先の皆さまとの共存共栄の精神ならびに法令・社会規範に基づき、サプライチェーン全体で責任ある鉱物調達を推進することを「CSR調達方針」で定めています。

 

今後の課題と取組み

前述の通り、環境規制強化の動きは近年特に加速していることから、現状を把握するだけではもはや不十分であり、将来動向を予測して先んじた対処が求められています。環境法令は特に欧米で先行して法制化が進む傾向にあり、海外からの情報入手が肝要になります。従来は月刊の専門誌やメールマガジン、各種セミナーなどを主な情報源としてこれら情報を入手してきましたがタイムラグがあり、より早期の情報入手の必要性が高まっていることから、環境規制情報を広く扱う世界的な企業と2022年中に契約を締結する予定です。今後も、より早期かつ広範囲の規制動向を入手することができるように対応を進め、当社グループ内への展開を図ってまいります。

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