子供は、好奇心によって磨かれる。

昨今、社会的な問題となっている子供の理科離れ。これを食い止めるべく、東京応化科学技術振興財団では科学教育の普及・啓発助成に対する支援など、様々な活動を行っています。当財団の理事長を務める藤嶋氏は、子供の頃は何に対しても興味を抱く必要があると語り、また阿久津も好奇心を持つことが想像力を養うと語ります。はたして、両者が子供のころに興味を抱いた体験とは。

昨今、社会的な問題となっている子供の理科離れ。これを食い止めるには、当財団の理事長を務める藤嶋氏は、子供の頃は何に対しても興味を抱く必要があると語り、また阿久津も好奇心を持つことが想像力を養うと語ります。はたして、両者が子供のころに興味を抱いた体験とは。

進行役

ご自身が子供だった頃、どんなことに好奇心を抱きましたか?

藤嶋

「私が小学生の頃は戦時中で、愛知県の山の中に疎開していました。
周りには何もなかったので遊び道具というのは、自然しかなかったんですね。
それで、満天の星を見上げては、流れ星がいくつ落ちるかを数えたり、蛍を捕まえては、あの光の点滅を見ながら不思議だなあと思ったり、そういう子供時代を過ごしていました。」

阿久津

「当時は電灯もなかったですからね。」

藤嶋氏

藤嶋

「そうです。電灯がなくて周りが暗かった。だから流れ星も1年中見られました。
懐中電灯もなくて、歩く時は缶詰の缶にろうそくを立てて、それで道を歩くんですから。。(笑)」

阿久津

「先生はいつ頃から東京で過ごされたんですか?」

藤嶋

「高校生の頃はもう東京におりまして、その頃私の心を奪った実験は炎色反応です。
ナトリウムやストロンチウム、カリウムの溶液に白金線を入れて、それをバーナーであぶると、色が全部変わりますね。
ナトリウムは黄色、ストロンチウムが赤色、カリウムが紫色といったように。
それが、今年も日本中あちこちの夜空を彩る、花火の元ですよね。」

阿久津

「炎色反応ですかぁ。。(笑)
私も子供の頃、不思議だなぁと思ったことはたくさんありました。
例えば、あんなに重い飛行機が、なぜ空を飛ぶのかは不思議でしたね。
また、理科の授業で熱量を調べる実験だったと思いますが、水温を上昇させるためにピーナッツを燃やした時、ピーナッツってすごく燃えるんだって、衝撃を受けたことを覚えています。」

藤嶋

「ピーナッツは油を含んでいて勢いよく燃えますからね。。(笑)
でも今の子はみんな不思議なことに気がつかないんですよね、当たり前だと思ってしまって。
例えば空の色とか。空がなぜ青いか、実は説明はなかなか難しかったんですが、これは空気中の酸素と窒素が太陽の光を一部散乱させていて、中でも青い光が一番多く散乱するので、空が青く見えるんですよね。」

阿久津

「原理的には、虹みたいなことですね。」

阿久津氏、藤嶋氏

藤嶋

「そうです。雲が白いっていうのも、あまり説明されませんけれども、雲は水滴ですね。
雲の水滴の大きさは直径0.01mm。その小さい水滴に、太陽の光はすべて散乱してしまうんです。
酸素や窒素のような空気中にある透明な分子だと、青い光が散乱するんですが、水滴の場合はすべての光が散乱しますので、そうすると白く見えるんですね。だから雲は白いんです。」

阿久津

「そう考えると自然界って、本当に不思議がいっぱいですよね。」

進行役

よく言われる若者の理科離れや科学離れについてどう思われますか?

藤嶋

「そうですね。小さい頃、特に小学生はみんな理科が好きで、夏休みの課題研究もイキイキとやりますよね。
アサガオを育てるというのは小学校1年生からやりますけれども、それを観察したりまとめたり、みんな楽しんでやりますよね。
でもそういった好奇心が、だんだん薄れていくという傾向がありますね。
物理とか化学のように、徐々に難しくなってくると興味が持続できない。
そうではなくて、理科や科学がどんどんおもしろくなっていくためには、実は親御さんが同じように好きになってくれないとダメなんですよね。」

阿久津

「ああ、そういうことなんですね。」

藤嶋

「そう、親御さんが好きになるというのがすごく大事なんです。」

阿久津

「当社は化学の会社ですから、入社を希望してくれる学生は理系の方が多いので、理科離れや科学離れを強く感じるということはあまりないのですが、でも理科や科学は探究心を養う素晴らしい分野だと思いますので、興味を持ってくれる子がたくさんいて、それをずっと持続する若者が増えたら、とても頼もしい感じがしますね。」

阿久津氏

藤嶋

「そう。探究心が強い人は、自分で納得するまでやりますからね。
私たち理科大の場合も、実験を授業にどんどん取り入れています。
それは学生たちに実験を通じて、自分で観察し、納得するまでやってもらうためです。
顕微鏡で見るとか、考えるとか、また授業に限らず家でそういうことをやってもいいんですよ。
科学の本当のおもしろさを知るには、自分で納得するまでやらないとダメですよね。
どうしてファーブルがああいうことを見つけられたか考えてみますと、やっぱりファーブルは、昆虫を一生懸命自分の庭で観察してますよね。
それで「ああわかった!!」と言って、ひとつのストーリーを作っていきますよね。
偉大な科学者を見ているとだいたいみんなそうです。
こだわって、自分でじっくり見て、考えて、それで新しいことを見つける。」

阿久津

「自分で見て、考えて、
こだわってやり続けるっていうのは、本当に大事なことだと思います。」

藤嶋

「そう、こだわるってことは、つねに関心を持ってるってことなんですよ。
だからあきらめずにやり続ける。
研究なんかは、そこが一番の本質ですからね。
あきらめずに次のことをやって、まだだれもやってないことをやらなきゃいけない、そうじゃないと新しい発見は生まれませんからね。」

阿久津氏、藤嶋氏

阿久津

「今の社会は、いろいろな意味で情報というのがどんどん入手できるようになってますけど、実際に自分でやる機会が少なくなっている気がしますね。
自分の手を汚すと言いますか、実際にやってみることがすごく大事なのではないでしょうか。
やってみないとわからないことっていっぱいありますからね。
自分でやって、自分で結果を見ていく、今の時代は、そういうプロセスが非常に重要だと思いますね。」

藤嶋

「最近はパソコンで何でもできてしまいますからね。。(笑)
本や百科事典を探して、手に入れて、ドキドキしながら開くんじゃなくて、インターネットでサッと調べるとか、そうなってますでしょ。。(笑)
不思議だなあと思っても、手軽にわかってしまうという面もありますよね。」

阿久津

「確かにその通りですね。」

~未来の新しい時代を創っていく若者の皆さんへ~

藤嶋

「日本は、鉱物資源がほとんどない国ですから、この国を支えていくのは、人間の力しかないんですね。
その力を養うためにも、ぜひ科学に興味を持ってもらって、身の回りの不思議なことに気づいて欲しいと思います。
そしてさっきも言ったように、こだわって、自分でじっくり見て、考えて、それで新しいことを見つける。
人間の本来の力をつけるには、若い頃のこういう経験が一番大事なことだと思います。」

阿久津

「科学って本当におもしろくて、AとBを混ぜると、ふつうにCという物質ができるわけじゃない。
ですから実際にやってみるということが大事だと思います。
やってみると、気付いて、考える。
その繰り返しによって、実は人間は大切な想像力を養っていると思います。
若い皆さんにはぜひ色々な経験をしていただいて、新しい時代を創る想像力を育てて欲しいと思います。」

大人は、失敗によって磨かれる。

どんな研究や開発にも失敗は付きもの。失敗を何時までも悔やんでいても、新しい発見や新製品の創出には結びつきません。ここでは、失敗に対する考え方や対処法などを、研究者と企業の経営者のそれぞれの目線から語り合います。はたして、失敗の捉え方に両者の違いはあるのでしょうか。

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